15年前、私は調剤薬局で受付と事務の仕事に転職をしました。当時は医薬分業制度は時期尚早と言われていて、薬局を開局する際、県の薬剤師会の方々から「3年ももたないだろう」と一笑に付されたと、私の会社の社長が申しておりました。そういった空気の中でスタートした調剤薬局でしたが、患者様からは「面倒くさい」「(診察費用と薬剤費用を)別々にお金を払うと割高だ」と、医薬分業は散々に不評でした。
「病院で診察し病院でお薬をもらって帰る」という慣例を変えることは、患者様にとっても病院の先生にとっても、そして苦情を直接受ける私たちにとっても、とても神経を擦り減らすものでした。「もって3年」という言葉の通りになるのではないか…医薬分業にOKを出した勇気のある先生も薬局長も、そして私たちもとても不安なスタートだったのです。中には「こんなことやってちゃダメだ」と怒鳴り散らした患者様もいました。一般企業のOLから薬局に転職した私でしたが、毎日毎日「すみません」と謝ってばかりいて、転職したことを後悔したこともありました。しかし、先生の人徳だったのか患者数が減少することはなく、徐々に「薬は調剤薬局でもらうのだ」という意識が患者様にも定着し、苦情を受けることも少なくなっていきました。調剤薬局で薬や健康について語り合う、患者様と薬剤師たちの朗らかで和やかな光景が見られるようになったのです。
「もって3年」と言われた医薬分業でしたが、現在ではほとんどの病院や医院が分業化を成功させています。そもそも経済理論から考えても分業が経営を衰退させる理由にはならないはずです。分業は、働く人にとっても利用する人にとっても良いことなのです。それが長い目で見れば病院のオーナーの利益にもつながるのだと思います。そして現在は調剤薬局事務士という資格制度まで誕生し、医薬分業は完全に社会に定着し、制度が進化していることを実感します。スタート当時の苦労を知る私としてはとても嬉しい限りです。薬局・調剤薬局に転職しようという方々に、少しでも心に残していただけたら幸いに思います。